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JA全農改革〜改革へ至る選好順位〜

 

 

 JA全農の自主改革

全国農業協同組合連合会JA全農)の自主改革案が公表されました。

 

具体的には、

 

主要肥料銘柄を400から10に集約

中古農機の全国展開

安価な後発農薬を発売

コメの直販を9割にする

 

などが挙げられています。

 

農協は農家の交渉力強化や所得向上のための組織として設立され、実際にそれに貢献してきたといってよいでしょう。

しかし、近年は既得権益化し、自由な農産物取引を妨げ、ときとして農家と消費者の不利益となるケースも出てきています。

 

最近であれば、JA土佐あきが農家に対して生産したナスを全て同農協を通して販売するよう圧力をかけたとして、公取委から再発防止を求める排除措置命令が出されました。組合員であっても出荷先は自由に選べるにもかかわらず、農家の味方であるべきJAが圧力をかけて農家の自由な取引を妨げていました。

 

このように近年ではJAは機能不全を起こしていると思しき行動をとっていたわけで、日本の農業の再興のため、JA改革が求められており、政府も小泉進次郎氏がプロジェクトチームのリーダーとなり、改革案の作成を主導しました。

 

そうした背景の踏まえての今回の自主改革案の発表となるわけです。

 

自ら改革するインセンティブ 

さて、JAは自ら改革をすすめるインセンティブはなかったと思いますが、それでも改革案を作成したのはなぜでしょうか。

まず、JAの選好順位を下記のとおりまとめてみます。

 

現状維持>自主改革>政府主導の改革

 

外部からの改革の強制が必ずしも厳しいものになるとは限りませんが、それでも自身の裁量によるものではないので、かなりの大ナタが振るわれる可能性は否定できません。

 それでも、改革への圧力が存在し、現状維持が困難な状況であり、何かしらの改革は不可避という情勢であったとします。

 

その場合は、自主改革案を作成し、課題に取り組んでいるという姿勢を示すことが次善の策となるでしょう。

 

あまりに内容のない改革案であればかえって叩かれるかもしれませんが、たとえ厳しめの改革案にするにせよ、自身でコントロールできるぶん、過大な改革案を吹っかけられるリスクは回避できます。

 

今日でこそ定着した感のあるCSRですが、当初は似たような動機で進められた側面があると思います。

 

ナイキのスニーカーは途上国で生産されていましたが、そこでは児童労働や劣悪な環境での作業が行われていたことが、NGOの告発によって明らかとなりました。

 

ナイキのスニーカーの不買運動が起こり、ナイキは問題への対処を迫られました。企業活動による負の外部効果は、労働環境だけに限らず、環境問題などもあり、企業とはいえ自由な経済活動だけをしていればいいという考え方が受け入れられないとすれば、それらを取り締まるために公的な規制を導入するという手もあります。

 

http://toyokeizai.net/articles/-/35708

 

ただ、企業としてはそれは困る。特に世論が企業への懲罰を求めているような状況では、過剰に厳格な規制が導入されてしまうかもしれません。

 

とはいえ、何もしないということが許されず何らかの対策は必要ということで、自主的な取り組みが選択されるというわけです。

 

JAがあえて自主改革案を導入した動機としてはそのようなことが考えられるわけで、小泉進次郎氏のもと改革の機運が作られ、現状維持は困難ということをJAが認識したという証拠といえます。

 

今後の行方

今後は改革が実際に実施されるのかに焦点が移ることになります。

 

政府なり世論が改革への圧力をかけ続ければ、JAは改革を実施するコストと、改革しないことによる懲罰、すなわち厳格な改革案導入とのあいだでコスト計算しなければならず、そうであれば改革に向けて取り組むと考えられます。

 

JAの組織改革が進み、JAの政治的動員力が落ちれば、今後のFTA交渉におけるJAからの反対が弱まるかもしれません。

 

もっともTPPご破算後の日米FTA交渉についていえば、農業団体からの反対がなくても、これだけ振り回されながらあっさり米国の要求を呑むのうであれば、政権のメンツにもかかわるので、なかなか難しいとは思いますが。

 

それにTPP交渉が妥結したときの安倍政権の政治的資源は潤沢にありましたが、今は森友学園問題で疲弊していますから、仮に協定の中身がTPPと同レベルでも2年前ほど容易には国内を説得するのは難しいことでしょう。