猫山猫之介の観察日記

猫なりに政治や社会について考えているんです。

政治

参議院選挙を前に参議院不要論を考える—ハイパーアカウンタビリティを避けるために—

トピック「選挙」について 10日が参議院選挙の投票日なわけだが、日本って選挙が多すぎはしないかって最近思う。 2000年以降で見ると、16年のうち12回選挙が実施されているので、1.3年に1回、衆議院選挙か参議院選挙が実施されている勘定だ。 2000年6月(…

知性主義はカッコよくなれるのか?そしてフォロワーを獲得できるのか??

内田樹編著の『日本の反知性主義』(晶文社、2015年)読んだ。 反知性主義についてこれまで知らなかった私にとってとても勉強になった本だが、一方で知性主義者(彼らは否定するだろうが著者たちを知性主義と仮定した場合)になりたいとも思わなかった。 理…

仲良くするべきなのに仲間なんてウザいんだよとエモーショナルに反発する人たちをどうやったら説得できるのか?

イギリスのEU離脱には本当に驚いた。 2014年に行われたスコットランドの独立是非をめぐる住民投票も終盤まで賛否が拮抗したが、結局最後は残留派が約10ポイント引き離して勝利したので、そのアナロジーで捉えてしまって、なんだかんだ結局イギリスはEU残留を…

リベラルコスモポリタンとナショナリストの相性の悪さ

自由や人権、平和といった普遍主義的なリベラルな価値観を掲げるコスモポリタンと固有の文化や民族的価値観を重視するナショナリストの相性は悪い。 コスモポリタン対ナショナリストの対立はかつてもあった。 その1つが19世紀のウィーン体制とその崩壊で…

取り残された層からどうやって支持を再獲得するか?

民主主義のよさの一つは勝者の流動性である。 今回の選挙で敗北しても次の選挙で勝利できる可能性があるから、今回の敗北を受け入れられる。それは政治家や政党にとってもそうだし、その政治家や政党の支持者にとってもそうだ。次回政権を取れる可能性が保障…

で、結局戦後とはなんだったわけ?(3) —西洋的政治思想の中に非西洋性を見出すよりも重要なこと—

現行憲法および今日の日本政治の根幹となる価値観である「自由」や「民主主義」、「人権」などは西洋から輸入された外来思想である。 この事実はこれらの価値観に親近感を抱く人であれ嫌う人であれ否定できない。 外来思想が流入して、日本はどうなったのか…

で、結局戦後とはなんだったわけ?(2) —リベラルの居場所—

私はリベラルの民主主義や人権、平和といった価値観に共感しているが、それでもリベラルのことは嫌いである。 そのきっかけは国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)への自衛隊派遣に反対する平和主義者たちの抗議デモであった。 UNTACは自衛隊が初めてPKOに参…

で、結局戦後とはなんだったわけ?(1)—嫌われものの戦後を好きになるには—

安保法制や憲法改正をめぐって護憲派の旗色が悪い。憲法9条を擁護しようものなら、お前は売国奴か、国際情勢がわかっていない愚か者か、平和ボケか、ネトウヨから相当な罵詈雑言を浴びてしまう。 メディアやネットニュースのコメント欄を見れば、安保法制反…

多数で決めるは悪いのか? —どんな決め方ならいい?—

「多数で決めて何が悪いのか」 5月2日の朝日新聞の「憲法を考える」という論説の一文である。朝日新聞自体が「多数で決めて何が悪いのか」と言っているのではなく、安倍政権の政治を多数の専制と捉えての一文である。 朝日新聞によると安倍政権によって立憲…

成功体験がのちの政策を束縛する

とある経済新聞は5月末に策定される予定の成長戦略が貧弱なものに終わることを懸念しているようだ。 その理由は自動走行やドローンといった流行りの施策が「的」として盛りだくさんに盛り込まれているのだが、それを実現するための「矢」が足りないことにあ…

国際合意の束縛的効果と危機に瀕する日韓慰安婦合意

なぜ政府は他国と合意を結ぶのか。 その理由は多岐にわたろうが、理由の1つがのちの政権の意思決定の拘束にある。 ある政治指導者が自身の望む政策をのちの世代まで残したいとしよう。政権交代の際に次の政権に残すよう頼むことも可能だが、次の政権がその約…

たとえ話の誤謬と認識の政治

ベンサムの功利主義、特に最大多数の最大幸福という概念はほぼ全ての哲学の教科書に載っている。 そして、しばしば彼の功利主義を説明(批判)する際に次のようなたとえ話がなされる。 すなわち、一人の生贄を犠牲にすることで、他の多くの人々が救われるの…

愚かな指導者にどうやって引導を渡すか—頑迷な現状維持派にはあえてアメを与えよ—

アセモグルとロビンソンによれば国家の経済発展をもたらす最たる要因は政治的・経済的制度であるという。 より具体的には自由民主主義のような包括的な政治制度と自由主義的な経済的制度を有する国家は発展し、対象的に権威主義的な収奪的政治制度や奴隷制や…

なぜわれわれは不満なのか—歴史認識を考える—

第2次世界大戦の敗戦後、米国を中心とする連合国によって日本の政治指導者の戦争犯罪が処罰された。確かにそれは罪刑法定主義に反するなど、法的には多くの問題を抱えた裁判ではあったが、それでも、サンフランシスコ平和条約で日本への賠償を役務に限ると…

イレデンティズムを持った覇権挑戦国、中国 —危険な覇権挑戦国、されど日本も自制すべき理由—

ジョージ・モデルスキーによると、歴史上覇権国は4カ国存在する。 すなわち、16世紀のポルトガル、17世紀のオランダ、18世紀から19世紀のイギリス、20世紀の米国である。米国の覇権は今日まで続いているわけだが、米国の覇権に取って代わろうとしているのが…

いつから政治家に本音を求めるようになったのだろう

民主主義を担うのは市民である。その市民は投票にあたり合理的な判断ができるのだろうか。 伝統的に政治学はこの問いに対して「否」と答えてきた。 ウォーラスが『政治における人間性』で人間は衝動や本能、性向によって駆り立てられる存在で、民主主義が理…

今の環境がいい —現状が維持されるのは介入がないからではない—

私は日本の自然が好きだ。ゆえに日本の自然はいつまでもこのまま残ってほしいと思っている。 ただ、日本の自然を保護すべきという意見に共感できるのは、私が日本の自然を楽しみたいというすぐれてエゴイスティックな理由によるのであって、特段自然保護それ…

民主主義に倦んでいる —トランプ&サンダース現象と民主主義でも解決できない不満層—

Horowtizによると、エスニシティや人種、宗教や言語等の属性によって分断されている社会では、エスニック集団ごとに政党が作られ、自分の属するエスニック集団の政党に投票する傾向が強くなるため、そのような社会では民主主義の定着が困難とされる。 多数派…

日本型家庭制度が社畜を産んだ?

最も流布している「政治」の定義は、イーストンによる「社会に対して行われる諸価値の権威的配分」です。 こうした諸価値の権威的配分はなんらかの集団や共同体が成立するところに常に存在してきました。集団の最も小さな単位の1つは家族で、その他、学校や…

受動史観と能動史観

押し付けられたから憲法は改正されるべきなのか。答えは「否」である。 それはなぜか。 理由は簡単だ。なぜならわれわれは自らの意思で能動的に憲法を受け入れ、そして支持してきたからだ。押し付けられたから本当はイヤイヤ従っていたんです、とはいかにも…